お菓子の家との遭遇 (パンくずリストの効用)
小石リストじゃないの?
もともとパンくず (Breadcrumbs) というのは童話「ヘンゼルとグレーテル」で、森の中に捨てられるヘンゼルとグレーテルが、家からの道のりにパンを落としておき、迷子になっても帰れるように、としたことから来ている。
実際にはパンの前は石を使って成功していたのだが、パンだと鳥に食べられてしまうので、結局ヘンゼルとグレーテルはお菓子の家に迷いこんでしまうわけだ。
(最近だとパンの代わりに劇薬を落とせば、鳥に食べられてしまっても足跡が分かるという説もあるが……)
パンくずリストは、多くのユーザビリティの書籍にも有効な手段(ただし補助的)ということで取り上げられているが、欧米人の感覚では家に帰れないでお菓子の家に着いてしまうことが「有効」と感じているのだろうか、と漠然とした疑問を抱いてしまう。
常々私は「小石リスト」でないと迷うように感じるのだが……
じゃあそのパンくずリストってそもそもなんなのさ?
What is パンくずリスト?
ちょっとした無邪気なツッコミはさておき、じゃあパンくずリストとは何か、ということになるわけだが、これはこのサイトでも利用されている
ページ左上部にある、
これがまさに『パンくずリスト』そのものである。つまり現在いるページが、そのサイトにおいてどのような位置づけでいるのか、あるいはウェブマスターがどういった経路でそのページにたどりつくものと想定しているかを示すものである。
このページであれば、FHPGフォーラムサイトのトップページから「コラム」というジャンルを選択し、その中の「サイト設計」ジャンルの「お菓子の家との遭遇」が現在地であると宣言しているわけである。
けっこう以前からあったナビゲーションであるが、「パンくずリスト」という表現で説明されるようになったのはニールセンの『ウェブ・ユーザビリティ』が紹介されてからではないかと思う。
いずれにせよ、このパンくずリストを利用しているサイトは数多く、そうであるからには利用するメリットがあるはずである。それはいったいなんなのか?
まあジャマにはならないし……
私がパンくずリストを利用している理由はタイトルの要因が大きい。サイトの画面内でパンくずリストが消費するエリアは確かにそれほど大きいものではない。
しかし、ユーザービリティの根幹に戻って考えると「ユーザーはサイト構造など気にしない」というのが大前提であるわけで、そういった構造を気にしないユーザーにとってはコンテンツ自体に興味がなければ容赦なく「戻る」ボタンを押したり、ページ内の興味を惹くリンクをクリックしてどこかへ行ってしまう。
そうなると、一生懸命パンくずをまいてみてもそこに気づくかどうかはかなり疑問。
救いはパンくずリストの普及率であり、ウェブ慣れしているユーザーであればパンくずリストの意味については見れば検討がつくものと期待することはできる。
ただ、パンくずリストでは長々とそのリンクの意味を説明することは通常ないわけで、興味を惹かせてリンクさせる、というものともまた少々意味合いが異なる。
そう考えると、パンくずリストですべてのユーザを助けられるとは全く考えられず、このナビゲーションが「補助的」と評されるのもしごく当然のことだ。
お菓子の家にたどりつく?
『ヘンゼルとグレーテル』の話に戻ると、パンくずは鳥たちに食べられてしまい、彼ら兄妹は魔女の罠であるお菓子の家にたどりつくことになる。
最初パンくずだと鳥に食べられてしまうんだから、意味ないんじゃないのか、みたいなことを書いたのではあるが、そういう意味では食べられたら困る=あれば便利、ということになるのであろうか。
いずれにせよ、構造を理解しているユーザーや少しでもサイト構造をユーザーに意識させたいwebデザイナーにとって「パンくずリスト」は試行錯誤の対象であり続けそうである。